グーグルが発表した「STADIA」の影響からか、にわかに現実味を帯びてきた「クラウドゲーミング」。手元にゲーミングPCがなくとも、重量級の本格的な3Dゲームがプレイできてしまうという、画期的なクラウドサービスです。
このクラウドゲーミングですが、構想自体は数年前からあり、海外の一部地域ではすでにサービスが提供されています。そして日本でもついに、クラウドゲーミングサービスが本格的に提供されるとのことです。
ソフトバンクとの提携で「GeForce NOW」が本格展開か?
nvidiaが2017年にリリースしたクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」は、日本でも利用可能でした。
しかし、実際にはレイテンシ(遅延)が発生したり、対応するタイトルが少なかったりと、いまひとつ使い勝手が良くなかった印象があります。それだけに、一般的に認知されているとは言い難い状況でした。
この状況が、2019年後半にかけて一変する可能性があります。日本の大手通信キャリア「ソフトバンク」と韓国の「LG U+」がnvidiaと提携し、5G回線を通じてGeForce NOWを提供するというのです。
その名も「GeForce NOW Alliance」。5Gが普及すれば通信可能なデータ量が飛躍的に向上し、クラウドゲーミングサービスがいよいよ実用的な段階になるでしょう。おそらく月額数百円~数千円で、ハイエンドゲーミングPCと同等の環境を使用できることになります。
実際にnvidiaではGeForce NOWのサーバーをRTX2080相当にすると発表しており、実売価格にすると30万円程度のゲーミングPCを「クラウド上から毎月定額で」利用できる環境が整うのです。
クラウドゲーミングサービスでゲーミングPCは不要になるか?
個人的には、クラウドゲーミングサービスは、自動車でいうところの「レンタカー」や「カーシェアリング」のような位置づけになると予想しています。つまり、クラウドゲーミングサービスが普及したからと言って「ゲーミングPCが不要になる」わけではないのです。
要は使い分けの問題で、「新しいPCを組むまでのつなぎ」や「出張や旅行先での本格的なプレイ環境」として重宝するでしょう。通常のゲーミングPCは「自分だけの専用機」ですが、クラウドゲーミングサービスは「低額で使用できる時間借りの共有物」ですからね。
用途や性質が全く異なるわけです。実際、全てをクラウドゲーミングサービスで賄うのは、やや無理があるでしょう。全てのタイトルがカバーできるわけではありませんし、ゲーム以外の用途では使うことができません。
例えば動画視聴や編集作業、データの保管、バックアップ、ブラウジングなどを高速かつ快適に行えるのは、通常のゲーミングPC独自のメリットです。また、自由にパーツをカスタマイズしたり、モニターを増設して作業しやすくしたりといった工夫も、ゲーミングPCの楽しみですよね。
ゲームは「価格」よりも「質」の時代へ
クラウドゲーミングサービスは、「重量級タイトルを安く遊べる」ことが売りといえます。月額数百円~数千円で、20~30万円のゲーミングPCと同等のスペックを借りられるとなれば、確かにこれはお得でしょう。
しかし、いかに5G回線が普及するとはいえ、世界中のどこでも全く同じ環境が整うとは限りません。インターネットを介する以上、かならず通信の問題が出てきます。
つまり、地域Aでは遅延が少ないが、地域Bでは多いといった具合にです。これは、FPSをはじめとしたマルチプレイにおいて、大きなハンデですよね。かつてスマートフォンがゲーム機を駆逐すると言われましたが、結局今も最新ゲームハードやゲーミングPCが売れています。
手元に物理的なゲーム用ハードがあるという安心感と、良質なゲーム環境の確保は、何物にも代えがたいのです。少なくとも今後数年は、クラウドゲーミングサービスとゲーミングPCの両方を上手く使うのが賢い選択だと思いますよ。