グラフィックカードには、GDDRと呼ばれるグラフィックカード専用のメモリが搭載されています。パソコンのメモリであるDDR SDRAMとは設計的にも良く似た部分がありますが、GDDRにはグラフィック性能をアップさせるための特徴を持っています。それではGDDRについて説明したいと思います。
GDDRとDDRの違い
GDDRは、通常のメモリと同じでSDRAMの一種です。メインメモリとして使用されるDDR SDRAMと、グラフィックカード専用として使用されるGDDR SDRAMとに分けられています。CPUからの命令を専門に処理するのがDDR SDRAM、メインメモリと呼ばれるものです。グラフィックカードに搭載されているGPUからの命令を専門に処理するのがGDDR SDRAMで、ビデオメモリやVRAMと呼ばれることもあります。
もともとはメインメモリとしてのDDR SDRAMをグラフィックカードに搭載していた時期もありましたが、グラフィックカードのGPUの性能が向上していく中、DDR SDRAMではパフォーマンスが追い付かなくなってきたため、グラフィックカード用として別々に開発されるようになりました。DDRの後に付くバージョンを表す数字が、メインメモリ用とグラフィックカード用でズレているのは、そのせいでもあります。
GDDRのパフォーマンス
GPUの処理能力を生かすためには、膨大な量のデータをGPUに渡し続ける必要があります。そのためにGDDRはDDRに比べて転送帯域幅が大きくなっています。DDR4 SDRAMでは1秒間に20GB前後の転送帯域を持っています。それに対しGDDR5では1秒間に180GB近くの帯域幅を持っています。
このパフォーマンスを実現するために、GDDRではDDRよりもはるかに広いメモリバスを持っています。メモリバスとはプロセッサーとメモリの間を通る道路のようなものです。広ければ広いほどデータもたくさん通ることができるで、より高速な通信が可能になります。
メインメモリにGDDRは使えない?
ここまでの説明で自然と浮かぶ疑問があるかと思います。メインメモリになぜGDDRを使わないのかという疑問です。これには設計上の問題が大きくあります。
グラフィックカードは、グラフィックカードという一つの製品で完結しています。中央にGPUがあり、GPUを取り囲むようにGDDRメモリが初めから固定されています。GPUとGDDRメモリ両方から発生する熱量を計算したうえで、冷却装置も搭載されています。
それに対し、CPUとメインメモリ、そしてマザーボードはそれぞれがモジュール化されており、いろんなメーカーのものを組み合わせることができます。ユーザーが自分で構成を考え、選び、そして取り付けたり取り外したりすることができるように設計されています。
モジュール化することには生産コストを下げ、パーツを安価に流通させることができるメリットがあります。反面グラフィックカードのように、すべてのバランスを考え最大限のパフォーマンスを基板設計からすることができなくなります。どちらも一長一短、メリットデメリットがあるのです。
GDDRにもSDRAMの特性上、性能向上の限界が少しずつ見え始めています。次世代のメモリ規格も既に発表されているものもあります。GDDRの性能は年々飛躍的に伸び、DDR SDRAMを抜き去りました。技術の進歩は目覚ましいものです。数年後には今のパソコンとは、見た目も中身もガラッと変わっているかもしれませんね。